2008/12/31

☆虹色の鱗

在りし日の記憶の岸辺で

あなたの欠片を見つけては拾いあげ

わたしのこころに貼りつけると

涙が自ずと流れるのです


夜の明けぬ晩冬のような寂しさや

日の差さぬ海底のような哀しみは

時の潮に濯がれて

わたしから剥がれてゆきます


身につけているのも痛い

剥がされてゆくのも痛い

波間に漂う虹色の鱗

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2008/12/29

★ラルゴ

深く落ち着いたチェロの響きが

わたしの心臓には聞こえている


アンダンテにはまだ早い

立ち止まっていた心が

足を踏み出したばかり


間近で見てみたい景色を見つけたの

そしていつか

軽快なピアノの音色を重ねる

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☆さざんか〜赤〜

色を塗るとしたら

白と茶で十分なこの町

とにかく新しいものが欲しくて

彷徨っていた


銀色の風が吹いて

甘く優しい香りが

耳元に舞った


雪路に広がっていたのは

ハートの形をした花弁だった

目の覚めるような鮮やかな色


そっと手に取るとやわらかくて

ほのかに温かかった


再び降り始めた雪が

体温と絡み合っては消えていった

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★さざんか〜白〜

木枯らしのなかで

道を急いでいた

ストールに顔をうずめて

家を目指していた


でなければ

銀色の風の中に足跡も素顔も

何もかもさらされて

凍え死んでしまうと思った


生垣を通り過ぎた刹那

風にふっと舞い上がった

優しくて甘酸っぱい香り

重なって広がる心のかたち


隣にいるだけで温かくて

かすかに触れただけで

翼が生えたみたいに躍っていた心


しまい込んでいた懐かしい幸せに

ストールを緩めて

花にそっと顔を寄せた

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2008/11/01

☆さみしさ

さみしいでしょうって

訊かれたら

ううん だいじょうぶって

繕えるのに


さみしくないでしょうって

訊くから

さみしいって

認めるしかないじゃない

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★一瞬一連

いつ死んでも良かった


最後にそう思えるくらい

いま、という瞬間をひとつずつ

丁寧に連ねてゆきたいの

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2008/09/14

☆綺麗

綺麗という言葉は

どこか冷たい


温もりをなくしたあなたの足を

だれかが綺麗と言った


綺麗という言葉は

遠くに感じる


色を足されたあなたの寝顔を

だれかが綺麗と言った


綺麗という言葉を

好きになれない


大好きなあなたが

触れることの出来ないところへ

行ってしまった気がするから

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★蝉

七日の命ならば

夕立の中でも

詠うことを止めないのに


七十年という確証のない安心が

わたしの口を閉ざし

羽を畳ませ

思考を怠惰にするのだろうか

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☆魂火

炎の残像は闇夜を突き抜けて

するすると昇っていった


重力には抗えず

ある一点で

抱えこんだ熱量を散らす


色と熱を解き放つ光


ゆるやかな放物線は

熱量を尽くして夜に溶けた


嗚呼 夏の流星雨

天に惹かれ

やがては地に還る魂

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2008/08/02

★ガジュマル

歩き疲れたあなたに

木陰を作ってあげたい


邪魔なものはみんななぎ払って

この腕で森を作るから

わたしに身を預けて

ゆっくり休んでいって


迷い疲れたあなたを

日射しから守ってあげたい


迷路の出口は

わたしからは教えられないから

せめてこれ以上

あなたが苦しまなくて済むように

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